卸の取引の約6割は、今も電話・FAX・メールで動いている


- 卸売業の取引約320兆円のうち、電子商取引は40.3%で、約191兆円は電話・FAX・メール・対面で動いています。
- 仕入れの側はメーカーの仕組みに乗れば電子化できますが、受注の側は得意先ごとに事情が違い、進みにくい状態です。
- 得意先に頼み方を変えてもらうより、届いた依頼を社内で品番に直す手間から減らす方が、早く始められます。
卸の取引は、どこまで電子化されましたか
電子商取引(EDI・Web)は40.3%です。残りの約6割、約191兆円は、今も電話・FAX・メール・対面で動いています。
経済産業省の調査では、2024年の卸売業の電子商取引は128兆8,684億円で、取引全体の40.3%でした。卸売業の総売上高は319.9兆円なので、電子化されていない分は約191兆円になります。
電子化が進んだのは、大手スーパーに納める食品・日用品の取引が中心です。報告書はその理由に「流通BMS」というEDIの標準化を挙げています。機械工具・管材・建材のように、得意先が中小の工場や工務店に広がる業種では、電話とFAXがまだ主役です。
なぜ、受注の側は電子化が進まないのですか
仕入れはメーカーが用意した仕組みに乗れば済みますが、受注は得意先ごとに事情が違い、頼み方を変えてもらうのが難しいからです。
中小企業庁の2022年の報告書には、業種ごとの聞き取りが載っています。電設資材の卸の協同組合の会員に配ったアンケート(132社が回答)では、電子受発注に対応している割合は、メーカーへの発注(仕入れ)が78.8%、お客さんからの受注が41.7%でした。同じ会社の中でも、受注の側だけが遅れています。
電子受発注に対応する予定がない理由の1位は、「取引先との取引の事情(価格交渉、信頼関係など)」で38.5%でした(31社の回答)。
報告書には、注文画面を用意しても、得意先から「電話の方が早い」と言われて使われなかった例も載っています。得意先は品番でなく現場の言葉で頼みます。その言葉を品番に読み替えるのは、卸の担当者の仕事として残っています。
得意先の頼み方を変えずに、何から減らせますか
届いた依頼を品番と単価に直すところです。得意先にはこれまでどおり頼んでもらい、社内の読み替えの手間を先に減らします。

同じアンケートで、電子受発注を入れた卸が感じた効果の上位は、「電話等の対人対応時間の削減」(72.4%)と「誤作業の削減」(65.7%)でした。品種の取り違えで出荷や納品のミスをした経験がある卸は、125社中74社(59.2%)でした。どちらも電設資材の卸の回答ですが、品名を品番に読み替えて受ける業種には共通する手間です。
読み替えの手間と取り違えは、得意先の頼み方を変えなくても、社内の手順で減らせます。
- 届いたFAXやメールを、1か所に集める
- 品名を自社の品番に読み替え、単価の候補を付けた下書きを作る
- 迷う行に印を付け、担当者が確かめてから見積を出す
- 直した行と理由を残し、次の下書きに使う
今週できること
1届き方を数える
1週間に届いた見積依頼を、電話・FAX・メール・LINE・Webに分けて数えます。
2読み替えに迷った行に印を付ける
品番に直すときに迷った行に、印と一言の理由を残します。
3よく来る3社を選ぶ
依頼の多い得意先を3社選び、下書きを試す相手にします。
よくある質問
得意先にEDIをお願いするのは、やめた方がよいですか。
お願いできる得意先には続けます。ただ、全部の得意先が乗るのを待たずに、電話・FAXの分の手間を先に減らします。
FAXの読み取りだけを入れれば足りますか。
読み取った後に、品番への読み替えと単価の当てはめが残ります。手間が大きいのはそちらなので、読み取りの先まで含めて比べます。
小さな営業所でも始められますか。
始められます。見積を出す担当者が1人いれば、その人の依頼から試せます。
